【メンテナンス】素人でも出来るロードチューブレスタイヤの取り付け手順・コツ
MAVICのUST対応ホイールを購入してからこの5年ほどずっと、ロードバイクはチューブレス(レディ)で運用しています。
- 鈍感な筆者でも気付くぐらい、明らかに転がり抵抗が少ない
- 乗り心地がいい(空気圧を少な目にして運用できる)
- それなりな距離を走っているけど出先でのパンク、トラブルなし
と文句無く使用できているが、取り付け時のビード上げだけは苦労してきました。タイヤとホイールの相性にもよりますが、上がらないときはとにかく上がらない・・・。
よくインプレ記事などで「なんの工夫もなくビードを上げられました!」とかあるけど、あれは最低限のルールとかノウハウを前提とした発言だと思います。鵜呑みにしてほんとうに何も考えずに取り付けようとしても、ドツボにハマるだけです。
何年か運用してきて自分なりにコツをつかめてきたので、素人のサンデーメカニック(しかもかなりズボラ)でも出来るロードチューブレスタイヤの取り付け・ビード上げの手順をまとめました。
目次
タイヤの取付
タイヤを起こす
パッケージから出したばかりのタイヤは折り畳み跡が付いていて、そのままホイールのリムに取り付けても密着度が低く、跡付近からエア漏れする可能性があります。
そこでパッケージから出して円形に立たせて、その状態で自立するぐらいまで放置します。
だいたい12~24時間程度でしょうか。この工程を個人的に、「寝ているタイヤを起こす」と呼んでいます。
クリンチャー化
タイヤが十分に起きたらリムに取り付けていきます。タイヤの片側を取り付けるのは問題ないと思いますが、もう片側を取り付ける際に、タイヤとリムに適合したインナーチューブを入れてクリンチャーとして取り付けます。この時のクリンチャー化は一時的なもので、チューブは後で外します。
この工程の意味は2つあります。
- 片側のビードを上げた状態にし、反対側のビードが少ない空気量で上がるようにする
- タイヤとリムの密着度を上げる
特に後者が重要です。インナーチューブが膨らむ力でタイヤのビードを上げ、リムの形と一致するよう馴染ませます。一度でも馴染めばチューブを抜いた後でも合いやすいというわけです。
チューブを入れた状態でチューブレスタイヤを取り付けるのは苦労しますが、定石通りにやればタイヤレバー無しでも可能です(注:タイヤによる)。
- クリンチャーなのでバルブ側から入れていく
- タイヤをリム中央までしっかり落とす
- チューブを噛まないようにする。空気を少し入れて、チューブがタイヤの外に外れていないか確認する
タイヤを取り付けてチューブがはまっているのを確認したら、空気を入れていきます。チューブが噛んでないか注意しながら少しずつ入れていきます。
空気を入れていくとパン、パンというタイヤのビードがあがる音が聞こえてきます。チューブが入っているので当然タイヤは限界まで膨らみます。ビードが上がりきっていないところがあれば、手で押し上げてください。タイヤのビードが外に動いて、リム内側の壁面までズレてビードが上がると思います。
最終的にリムとタイヤが許容する空気圧の上限まで入れて1日放置します。こうすることでタイヤがリムの形に適合し、密着度が上がります。
クリンチャー化解除
1日放置したあと、中のチューブを取り外します。タイヤを外すために空気を抜きますが、バルブ全開で一気に抜かないようにしてください。ビードも一緒に落ちてしまう懸念があります。空気は少しずつ抜きます。
空気が抜けきったら片側のビードを落として外し、中のチューブを取り出します。落とすのは片側で、両方のビードを落としてはいけません。上がったままのビードは、チューブレス化するときにそのまま使えます。
チューブレスバルブ取付
インナーチューブを外したあと、チューブレスバルブを取り付けます。バルブはリム指定のものがあれば間違いないですが、汎用品を使う場合はStansNotubeやパナレーサーのような、ゴムが丸いタイプのバルブをオススメします。ゴムが四角いものより、リムへの密着度が高い気がします。
それとバルブコアが取り外し可能なものを選んでください。あとからシーラントを足す時に、バルブから注入できるので楽です。
バルブ付近が最もエア抜けし易い場所なので、しっかり力を込めてねじ込んでください。ただしペンチなどの工具は使ってはいけません。リムテープが痛んだり、最悪バルブが貫通します。手で可能な範囲で十分です。
ビード上げ
石鹸水塗布
外した側のタイヤをリム内に入れたら、外した側に石鹸水(食器用洗剤を薄めたもの)を塗布していきます。必ずタイヤをリム内に入れた後に石鹸水をつけてください。入れる前に塗布するとタイヤが滑ってつかめなくなります。
はまっていない側のビード全面に塗布してください。洗車スポンジで泡立てると塗りやすいです。
空気入れ
タイヤが取り付けられたら空気を入れていきます。タイヤは立てるより倒した状態の方が、均一に空気が行き渡りやすいらしいです。フロアポンプで普段と同じように入れていくと2barくらいからビードがはまりはじめて、3~4barぐらいでチューブを入れた時と同じようにパンパンとビードが上がる音が聞こえてきます。あとは普通に入れていくだけです。
2barぐらいから空気が漏れてくるなら、タイヤがリム内側に落ちきっていないのかもしれません。はじめは全周でビードを落として空気が均等に行き渡るようにしておく必要があります。
またバルブ付近にも気をつけてください。タイヤの外側に出ていないか、しっかり固定されているかを確認してください。
ビードが上がった後もタイヤとリムを密着させるため、それぞれの上限いっぱいまで空気を入れておきます。空気を入れた状態でまた24時間ほど放置して、空気が大きく抜けていなければOKです。
写真のように洗剤の泡が少し(プクプクと)出るぐらいで、一晩で1barぐらいの抜け量であれば、あとの工程でシーラントが埋めてくれるので問題ありません。
シーラント注入
シーラント注入
シーラント無しの状態である程度の空気圧を維持できているのが確認できれば、シーラントを入れるためにバルブコアを外します。この時も空気は少しずつ抜いてください。
バルブ位置を時計の4時or8時の位置からシーラントを入れていきます。バルブ位置が真下(6時)にすると、入れた傍からシーラントがあふれて漏れるので要注意です。
StansNoTubeやIRCの60mlボトルは、コアを外したバルブにそのまま突っ込むことができるので便利です。
新品の時は前後30mlずつ入れています。初回はタイヤとリムの隙間を埋めるために使われるので気持ち多めぐらいの方が良いと思います。
バルブ掃除
注入した後にペーパータオルやティッシュなどでこよりを作って、バルブ内をかるく掃除してください。バルブ付近はシーラントが固まりやすいのでそれを防ぐためです。
シーラント撹拌
掃除の後にバルブコアをしっかり取り付けて(ここが緩いと空気が抜けます)、空気をまたまた上限いっぱいまで入れます。
その後、タイヤを前後左右に振って中のシーラントをホイール全体に行き渡らせてください。シーラントがタイヤとリムの間を埋めるのと、タイヤ裏側にシーラントの膜を作って空気漏れを防いでくれます。
この工程はPIRELLIのタイヤパッケージにも記載されていました。
ここまでやってからさらに一日以上放置し、大きく空気が抜けていなければ完了です。
シーラント無しの状態よりも空気の抜けが早い(1日1bar近く)場合は、バルブコアの締め込みがあまい可能性が高いです。コアを締めこむ際は、バルブに負担がかからないように抑えながらやりましょう。
まとめ
この作業工程でやれば経験上確実にビードがあがり、意図せず落ちることもありません。またローテーションやホイール間の移し替えの際、以前のリムの形に馴染んでしまったタイヤであっても付け直すことが可能です。
かなりマージンをおいて作業しているので時間はかかりますが、家庭にある機材で作業可能な点もポイントです。
チューブレス構造は当面はロードレース界隈の標準になっていくと思われるので最新機材への対応するためと同時に、旧来のタイヤ構造がレガシー化(悪い意味での遺産・旧規格化)してアップデートされない・補修部品が手に入らない、になっていく可能性も考えて、今のうちに手順は身につけておいた方が良いと考えています。
チューブレスのビード上げに不安を抱いている方がいれば、ぜひこの手順を試してみてください。